アモルフォ プレミアム

対談 佐藤 卓氏×渡辺 弘明氏

佐藤 卓氏

佐藤 卓

グラフィックデザイナー

1955年
東京都生まれ
1979年
東京芸術大学デザイン科卒業
1980年
同大学院修了、株式会社電通入社
1984年
(株)佐藤卓デザイン事務所設立

毎日デザイン賞、ニューヨークADC賞、Gマーク大賞、他受賞多数

【代表作品】
「ニッカ・ピュアモルト」(商品デザイン)
「ロッテ・ミントガムシリーズ」(商品デザイン)
「明治・おいしい牛乳」(商品デザイン)
「NHK教育テレビ・にほんごであそぼ」(アートディレクション)
その他多数

「アモルフォ・プレミアム」について対談する佐藤卓氏と渡辺弘明氏 渡辺 お使いになってみて、いかがですか?

佐藤 いやあ、圧倒的に使いやすいですよ。(ごとくを見ながら…)これ、微妙に中心に向かって少し落ちているんですよね。一見水平に見えますけど…。上に乗せる鍋の安定性を考えてのことですよね?

渡辺 そうです、微妙に沈んでます。

佐藤 デザイン言語がすごく抑えられていて、とてもいいと思います。
上に乗る食材や鍋や料理に目がいく、食の主役に少しでも意識が向くように考えられている。
できるだけ主張しない、ということですよね。とかくデザイナーはいろいろやりたがるものですけどね…(笑)。

渡辺 ハイ、実は私の会社のCIを佐藤卓さんにお願いしたんですけど、そのとき卓さんのポリシーをお伺いして感銘を受けた部分がありました。私も同じようなことを意識してデザインの仕事をしてる部分がありますけど、特に余計な要素を入れないという事には共感しますね。

「アモルフォ・プレミアム」について対談する佐藤卓氏と渡辺弘明氏 佐藤 できるだけ少ないデザイン言語にすべての情報を込める。それがシンプルでいいモノだと思うんです。
削っていくのではなく、少ない言葉ですべてを表現するのが、いいデザイン。
例えば、この点火つまみ。
片側を二次曲面だけで、一つの面の変化だけで、握れるように、回せるように、済ませている。情報を削っているわけではなく、そこにすべてを込めてるんですよね。そこが素晴らしい。
アップルのデザインがなぜいいか。あれだけの少ないデザイン言語にすべてが集約されています。

渡辺 ほんと、そうですね。

佐藤 とかく飾らないと語れない、と思っているメーカーが多いですよね。
「これだけ考えてます」「こんなに思っています」と、その言葉数がデザイン言語に出てしまう。
でも、自信がある人は語りませんものね。人間と一緒ですね。この製品には、デザイン言語を減らしていく美意識をすごく感じますよ。

渡辺 ありがとうございます。

佐藤 いや、一発で、それまでうちで使っているものと入れ替っちゃいました。使いたいと思う気持ちをすぐに引き出してくれた、という感じです。

渡辺 いや、そのように評価していただけるのはとても光栄です。

「アモルフォ・プレミアム」について対談する佐藤卓氏と渡辺弘明氏 佐藤 何かこう、生活に溶け込むという感じですよね。 今の生活者は生活に溶け込むかどうかシュミレーションする能力を、けっこう持ってますから。 いかにデザインをしないように見せるか、というのが難しい。まさにこの製品、こういうことですよね。 モデルチェンジに当ってどこまで変えるのかというのは難しいですよね。生活者の距離感とメーカーの距離感というのは、かなり違うものですが、今回の「アモルフォ プレミアム」は、そのあたりがごく自然な変化の中におさまる感じだったんでしょうね。

渡辺 らしさ、というのは意識しました。

佐藤 あと、原材料も最低限の量に抑えられているという気がしますよね。

渡辺 無駄な素材の使い方はしたくなかったですね。
例えばコ-ナーパーツ。別個に作るのではなく、ごとくと一体化させて天板の合わせの押えにも使っています。

佐藤 なるほど!よくできてる。何でもなく見える。
そこにそんな工夫があるとは思わない。必然的にできたモノですね。

渡辺 そうなんです。
今思えば、ある意味、必然的に決まっていったというプロセスだったんです。

「アモルフォ・プレミアム」について対談する佐藤卓氏と渡辺弘明氏 佐藤 そこが良かったんでしょうね。
無理やり自分の考えにねじ曲げるのではなく、素直に今すでにあるコンテンツを組み上げていく中で、その関係性においてできるだけ無駄なことをやらないで、組み上げる。その交差点を探すようなことですよね。

渡辺 そうですね、そこがプロダクトデザインの面白いところだと思いますね。 ファンクションとデザイン、交差点を探ってく。
…交差点、っていい言葉ですね。

佐藤 条件、人の価値感、企業の歴史・財産、アイデア、そういったいろいろなものが比較的交わりそうなところを探っていく。
最初はそれぞれバラバラなんです。交わっていない。
でもそれらが集まっていそうなところ、そこをキュッとつまんで一つの交差点にしていく作業がデザインじゃないか、って思います。
イメージとしては、そんなことをデザイナーはやっているのではないでしょうか。

渡辺 あるべき姿を探っていくというんでしょうかね。

佐藤 美の中には必然性が宿っています。
この製品を多くの人が美しいと見極められるのは、機能という必然が宿っているからでもあるんでしょう。

渡辺 ありがとうございます。

「アモルフォ・プレミアム」について対談する佐藤卓氏と渡辺弘明氏 佐藤 いや何といっても、それはもう、なめるように使っていますから…(笑)。
やっぱり冬は鍋ですよね、一週間に一度は使っていますよ。
鍋は大好きです。
スープまで全部頂くことができて、洗い物も少ない。あらゆるいろんな味が楽しめて…。

渡辺 ご自身も、料理をされますか?

佐藤 いや、しないんです、食べる方専門(笑)。そこ言われると弱いんですが・・・(笑)。

佐藤 あとね、メーカーさんは、良いモノができたら、売っていかないとね。
私が客観的に見て、これはいいモノです。こういうものが多くの人の手に渡って、たくさん使ってもらいたいですね。

この製品は、カセットこんろの“原形”にたどりついたといえるでしょう。足すものも引くものもない。

渡辺 ありがとうございます。お褒めの言葉を頂いて、大変光栄です。
今日はありがとうございました。

(プロフィールおよび対談内容は、記事執筆時点のものです。)

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